無題

土曜の活動日に来なかった彼女が車校の合宿の卒検に落ちたというのは、金曜の夜に電話をしても留守番電話サービスに繋がるということで分かっていた。
土曜の夜は、活動の帰りに一年生何人かと飲みに行ったが、メールをしても返事は来なかった。
そして、今日もメールをした。
しかし、30分くらいしても返事は来ず、電話をしてみることにした。
彼女は出た。


彼女も、どれくらいかは分からないが、丁度電話をしようとしていたところだったらしい。
彼女は卒検に一度は落ちたが、昨日には帰ってきたようだ。
どうやら地下鉄に乗っているときと、彼女が電話したのがかち合ったらしく、電話したのに直ぐに留守番電話サービスに繋がったと言っていた。
話は合宿がどうだったかの世間話をすると同時に、お互いが思ったからか付き合いについてとなった。


彼女は、友達と合宿に行ったのだが、ずっとこのことについて話していたらしい。
そして、言われた。
彼女は前から、付き合う以前の関係に戻りたいと言っていた。
しかし、うちはそれを説得させてきた。
いや、はぐらかしてきた。
その都度彼女の考えは聞いていたので、今になって理由も聞く必要は無かった。


彼女が考えてきた2週間、うちも考えていた。
彼女のことが好きでなくなっているのではないか、と。
今回うちはこれを話すつもりだった。
別れたいわけではない。
だが、話しておきたかった。


外は最近夜に続く雨が降っていた。
苦しくはなかった。
彼女の思いは、いつの間にか互いの思いにもなっていたからだ。
しかし、1つだけ違うことはあった。
うちは彼女のことが好きだった。
付き合った当初と比べればその想いもまた違うが、想いは消えてなんかいなかった。
どうしようもない思いが体中から感じられた。


0時も近付いた頃、父親が床に就きたがっているのが分かったので場所を変えようと外に出た。
外は大雨ではなくなったものも、まだ小雨が少し降っていた。
会話はもう、別れを止める会話でなく、快く別れを受け入れる会話になっていた。
思ったことは大体言った。
数は少なかったが、言いたいことは言った。


場所を転々としつつ、最後にパチンコ屋にある建物状にはなっていないが2階建ての駐車場に上った。
上ってから河原に行けば良かったかな、と思ったが、此処に決めた。
試しに「あーあー」と言ってみる。
これだけでも大声にするのは何か恥ずかくて出来なかった。


「@@@ー、好きだ。好きだ」


別れの言葉だった。
お互いに嫌いになったわけじゃない。
「付き合う」ことが出来なかった。
ただそれだけだ。


帰りには雨が少し強くなっていた。